営業の攻略法

ストックオプション

ストックオプション
(右) Fringe81株式会社 代表取締役 田中 弦 氏

7.「希望者が希望株数を購入できる有償ストックオプションが効果的だった」ー 上場後のストックオプション設計を徹底議論

株式会社マネーフォワード 代表取締役社長 CEO 辻 庸介 氏

創業した時に、ある先輩に「SOというのは、あまり経営者が思っているほど価値を感じてくれないよ」と言われ、「あまり出さない方がいいのではないか」と助言をいただきました。

小林 意外に皆、計算していないですよね。

していませんね。

宇佐美 本当にびっくりするくらい計算していません。

なので、それがどこまで経営者が思っているほどの価値を感じてもらえるのか、ワークするのかなと思います。

小林 ということは、インセンティブとして効いていないということですよね。

効いていないことは勿論ないのですが、僕たちが思っているよりは効いていない場合があると思いました。

小林 上場後に一気に上げたんですか?

計画を立てて徐々にです。

小林 田中弦さんのところはどうですか?

田中 ストックオプションというのは、基本的に不公平です。

(右) Fringe81株式会社 代表取締役 田中 弦 氏

田中 それから、ストックオプションに関して、先ほど辻さんがおっしゃった通り、どれだけ懇切丁寧に「給与に課される税金と、ストックオプションを行使したときのキャピタルゲイン課税というのは全然違うよ」というような話をしても、それでも分かってもらえず、インセンティブにならないというのは確かにあります。

宇佐美 本当ですか?

田中 本当ですか?

宇佐美 少し前に、従業員持株会のいわゆる会社負担のところを、弊社は30%にしたんですね。

田中 それはすごいですね。

宇佐美 とたんに参加比率が高まりました。

田中 それは、30%という比率の高さからだという気がします。

宇佐美 それまでは10%だったのですが、10%の時は正直あまり効かなかったのが、30%にしてからは、30%引きで株が買えるんですか!みたいな感じです。

田中 そうですよね、そう思います。

小林 ということは宇佐美さん、従業員持株会があるうえに、この業績連動型のエクイティ・インセンティブも更に入れているということですか?

宇佐美 そうですね。

小林 これはどういう仕組みか、少しご説明いただいてもいいですか?

希望者向けの有償ストックオプションを従業員全員を対象に発行

宇佐美 昨年(2017年)ですね、役員向けと、従業員向けにそれぞれ業績連動のストックオプションを発行しました。

株式会社VOYAGE GROUP 代表取締役社長兼CEO 宇佐美 進典 氏

小林 これは実際に、従業員の方からどれくらいの応募がありましたか?

宇佐美 従業員が300人強いますが、100人以上応募してきました。

小林 そんなにきたんですか!?

宇佐美 はい。

小林 オプションを買う時点で、(有償で発行されるためオプションを取得するため)それなりの金額を払いますよね。

宇佐美 そうは言いますが、一定の条件を付けています。

小林 条件付きなので、オプション価格を抑えているという形ですね。

宇佐美 どちらかというと、「少し頑張れば何とかできるかもしれない」という、宝くじのようなものだと思います。

小林 差し支えなければで結構なのですが、業績を達成したらどのくらいのインセンティブになるのでしょうか。

(ストックオプション 左) シニフィアン株式会社 共同代表 ストックオプション 小林 賢治 氏

スタートアップ・ベンチャーが最低限知っておくべきストックオプション制度と税制適格の仕組みとは?

スタートアップ・ベンチャーが最低限知っておくべきストックオプション制度と税制適格の仕組みとは?

(募集事項の決定)第二百三十八条 株式会社は、その発行する新株予約権を引き受ける者の募集をしようとするときは、その都度、募集新株予約権(当該募集に応じて当該新株予約権の引受けの申込みをした者に対して割り当てる新株予約権をいう。以下この章において同じ。)について次に掲げる事項(以下この節において「募集事項」という。)を定めなければならない。
一 募集新株予約権の内容及び数
二 募集新株予約権と引換えに金銭の払込みを要しないこととする場合には、その旨
三 前号に規定する場合以外の場合には、募集新株予約権の払込金額(募集新株予約権一個と引換えに払い込む金銭の額をいう。以下この章において同じ。)又はその算定方法
四 募集新株予約権を割り当てる日(以下この節において「割当日」という。)
五 募集新株予約権と引換えにする金銭の払込みの期日を定めるときは、その期日
六 募集新株予約権が新株予約権付社債に付されたものである場合には、第六百七十六条各号に掲げる事項
七 前号に規定する場合において、同号の新株予約権付社債に付された募集新株予約権についての第百十八条第一項、第百七十九条第二項、第七百七十七条第一項、第七百八十七条第一項又は第八百八条第一項の規定による請求の方法につき別段の定めをするときは、その定め

募集新株予約権の申込み・割当て又は総数引受契約の締結

(募集新株予約権の申込み)
第二百四十二条 株式会社は、第二百三十八条第一項の募集に応じて募集新株予約権の引受けの申込みをしようとする者に対し、次に掲げる事項を通知しなければならない。
一 株式会社の商号
二 募集事項
三 新株予約権の行使に際して金銭の払込みをすべきときは、払込みの取扱いの場所
四 前三号に掲げるもののほか、法務省令で定める事項

2 第二百三十八条第一項の募集に応じて募集新株予約権の引受けの申込みをする者は、次に掲げる事項を記載した書面を株式会社に交付しなければならない。
一 申込みをする者の氏名又は名称及び住所
二 引き受けようとする募集新株予約権の数

2 次に掲げる場合には、前項の規定による決定は、株主総会(取締役会設置会社にあっては、取締役会)の決議によらなければならない。ただし、定款に別段の定めがある場合は、この限りでない。
一 募集新株予約権の目的である株式の全部又は一部が譲渡制限株式である場合
二 募集新株予約権が譲渡制限新株予約権(新株予約権であって、譲渡による当該新株予約権の取得について株式会社の承認を要する旨の定めがあるものをいう。以下この章において同じ。)である場合

3 第一項に規定する場合において、次に掲げるときは、株式会社は、株主総会(取締役会設置会社にあっては、取締役会)の決議によって、同項の契約の承認を受けなければならない。ただし、定款に別段の定めがある場合は、この限りでない。
一 募集新株予約権の目的である株式の全部又は一部が譲渡制限株式であるとき。
二 募集新株予約権が譲渡制限新株予約権であるとき。

ストックオプションの発行・登記

ストックオプションの行使・株式の売却

(新株予約権の行使)
第二百八十条 新株予約権の行使は、次に掲げる事項を明らかにしてしなければならない。
一 その行使に係る新株予約権の内容及び数
二 新株予約権を行使する日

(2項以下省略)

創業者が語る、誰も教えてくれない「ストックオプション」…SmartHR 、LayerX、カウシェ編【1万字対談】

宮田昇始(SmartHR)、門奈剣平(カウシェ)、福島良典(LayerX)

加えて、(宮田さんの)SmartHRさんのようにレイター(上場前の安定成長期)までステージを進めて大成功するのは、日本のスタートアップではまだ珍しい例です。5〜7年くらいでマザーズに上場するケースの方が多いので、(経営者としては)正直、そのくらいの期間は在籍して貢献して欲しいという気持ちもあります。今のアメリカのように上場までの期間が10年を超えるケースが普通で、さらにそれが伸び続けているような状態に日本もなってくると、SOもそれに合った形に自然となっていくのかなと。

宮田:さっきの、「半分は退職しても権利行使できる」ように変更した話ですが、全部じゃなくて半分にしたのは福島さんと近い考えです。従業員側にも多少はデメリットがないと、釣り合わないと当時は思っていました。

そもそもなぜ最初から退職しても失効しない仕組みにしなかったかというと、「初めての起業で知識がなかった」のと、「なるべく従業員には長く在籍して欲しいと考えていた」からなんですね。

でも実際にやってみると、まぁ長いんです。「SmartHR」の提供を始めて6年になるんですが、スタートアップの6年は本当に長い。これがもし10年となった時に、最後までやる人ってどのくらいいるんだろうと。何年間も働いてくれたのに途中で辞めてSOを失効するのは経営者としても申し訳ないですし、辞めた従業員も最後まで残って金銭的に成功した人を見たら面白くないんじゃないか。それって変だな、なんか違うよねと思うようになりました。

広がり始めた「信託型SO」、その理由は

SO1

税制適格SOは取得時や権利行使時に税金の支払い義務はなく、株式を売却した時まで課税が繰り延べされる。権利行使価格が年間1200万円を超えてはならず、付与決議日から2年経過後かつ10年以内に行使しないといけないなど決まりは多いが、従業員への負担も少なく、日本のスタートアップではポピュラーなものだろう。

一方で近年、導入企業が増えているのが信託型SO、正式には「時価発行新株予約権信託」だ。このスキームでは企業価値が上がる前の低い価格で発行したSOを信託で一時的にプールしておくことができるため、企業は「誰に」「どのくらい」付与するかを後で決めればよく、従業員も入社時期にかかわらず同価値のSOを得ることが可能だ。

—— LayerXのSOは、どのような設計になっていますか?

福島:無償のもの(税制適格)と信託型のものどちらも利用しています。これには前向きな理由も、後ろ向きな理由もあります。税制適格SOは権利行使価格が年間1200万円を超えてはいけないので、価値が上昇したレイターステージなどに入社した人は、もらってもほとんど行使できない可能性もある。一方の信託型はそういうこともなく、従業員にとってはすごく有利な仕組みです。(広義で)僕らの採用競合となるような会社さんはほぼ導入しているので、「(信託型を)取り入れない」選択肢はなかったです。

福島良典(LayerX)

宮田:信託型SOが出てきた時はものすごく話題になりましたよね。税制適格SOは付与された人が実際どれだけ活躍するか分からないですし、たとえ最初の半年や1年すごく活躍されてても、その後も続くか分からない。なのでエイっと配りにくい、ないしは配った後に不整合が起きやすいインセンティブでした。

その点、信託型は評価制度と連動して付与することが可能なので、活躍した人に活躍した分だけ、実績に基づいて適切に渡すことができる。しかも行使価格が発行したタイミングでロックされるので、後から配ると旨味が減っちゃうみたいなこともないのは、大きなメリットですよね。

福島:ただ正直、本当に安定性があるのかというところは疑問に思っています。実は税制適格じゃなくなりましたとか、税務的に不安定だから従業員が行使できないとなったらどうしよう、と。信託型SOを使って上場している企業もあるのでそんな可能性は少ないと思いますが、100%信託型に振らずに無償の税制適格SOとのハイブリッドにしているのは、そうした懸念からです。

SOの配り方には「組織のポリシー」が表れる

門奈剣平(カウシェ)

SOをいつ、誰に、どの程度付与するかは重要な資本政策だ。ただし、SOの発行は事業会社が無制限に発行できるわけではない。2001年の商法改正以前は、付与できるSOは発行済み株式総数の10%以下に定められており、現在は制限が廃止されたものの、慣例として10%前後が望ましいとされている。

『IPOを目指す会社のための資本政策+経営計画のポイント50』(佐々木義孝)によると、2017〜18年9月までに新規上場した企業のSO発行比率は平均値で7.5%、中央値で10.4%だった。ちなみにVC比率は同25%14.3%だ。

福島:SOを発行する意義はリスクを取ってくれた人たちと成功を分かち合うことだと考えているので、LayerXでは今のところは入社する正社員全員に配っています。もっと人数が増えた時にこのポリシーを変える必要が出てくるかもしれませんが、少なくとも今のフェーズでリスクを取ってくれた人には報いたいと思っていて。

門奈:本当にそうですね。カウシェは今アーリーステージなんですが、どんなにビジョンやカルチャーに共感して入社していただいたとしても、キャリアも給与もリスクを取ってきてくださる方がほとんど。やっぱりその気持ちにしっかり報いたいという思いがあります。

福島良典(LayerX)、門奈剣平(カウシェ)

福島:僕の周りの経営者は、社員にSOを配りたくないとか、騙そうとか思ってる人は1人もいません。でも先を見渡せないことによる難しさから、結果的に完璧な配分にはならない……。

SOの配り方には組織のポリシーがよく現れていると思うんですが、早くリスクを取ってくれた人に多く報いる傾向があるというのは、受け取る側の皆さんは知っておいた方が良い情報な気がします。SOで一攫千金を狙うならリスクを取ろう、という考え方が大事かなと。

大切なのはテクニックよりも時価総額

職場

—— 経営者同士でSOの設計について情報交換することはあるんですか?

門奈:僕はアメリカのSOの事例を参考に設計しました。シリコンバレーのスタートアップのSOは退職しても失効せずに、一定期間、だいたい3カ月間は行使できるようになっているところが多いんですよね。スタートアップを転々としながらSOのポートフォリオを持っているような人もいるという話も聞きました。

福島:配分などはメガベンチャー、たとえばメルカリが上場した時に、どういう資本政策をやっているのかなどは参考にしました。このくらいのタイミングで、これくらいのリスクを取った人にはこういう配分なんだと。基本的には想像通りでした。

いろんな会社さんのSOの使い方を見て分かったことは、「SOは一般的に10%くらいの発行が相場になっていること」それくらいしかない。なので、行使価格を下げるとかのハック的なことよりも、(最適解がないがゆえに)会社をめちゃくちゃデカくする方が大事だと思ったんですよね。(時価総額)100億円で上場して1株持ってますみたいな状態は、従業員が取ってくれたリスクに見合わない。だったら1兆円目指す方法を考えよう、その方がみんなハッピーだし、そうじゃなかったらダメだという方向に、僕は頭を切り替えました。

門奈:従業員からしたら(SOの)0.1%が100億の会社と1兆円の会社では意味が全く違ってきます。

宮田昇始(SmartHR)、門奈剣平(カウシェ)

宮田:経営者ではないんですけど、SmartHRに初期から投資してくれているCoral Capital創業パートナー兼CEOのジェームス(James Riney氏)に相談したことがあります。SOそのものというよりCOO候補の方へのオファーだったんですが、ジェームスに「その条件だったら僕は受けない」と言われて。その時のSOは辞めたら失効するものだったんです。

未上場で巨大化するスタートアップに10%は適切か?

東証の鐘

福島:多分これから僕らが考えないといけないのは、IPOまでの期間が長くなるんですよね。そうなった時に今まで通りのやり方でいいよねと思考停止するのは間違ってると僕も思ってます。

宮田:これから未上場で巨大化するスタートアップが増えていくと、今の日本の(発行済み株式総数における)SO比率のスタンダードである10%は、従業員に配るには少な過ぎるんじゃないかなと。これでは大成功した時に、創業者とVCだけが儲かり過ぎる。

なので元々は10%だったんですが、途中で株主達と協議して少し増やして、マックス(最大限)に発行しました。それでもダイリューション(1株あたりの価値が低下)していくので、(最初から)マックス20%くらいまで交渉して枠を確保しておくべきだったと、今となっては思っています。

門奈:僕らも元々10%だったんですが、日本市場はもちろん、いずれは世界でも頑張りたいので、グローバルスタンダードから見てもっとここは上げていくべきだということを投資家の皆さんにお話させていただいて、その後15%まで増やしました。

会社の成長とSO枠が連動する契約を

宮田昇始(SmartHR)

宮田:今思うのは、初期から20%くらい発行できるようにしておいて、ダイリューションしたり、一定のマイルストーンを踏まなかったら一部失効するような契約のSOを作っておけばよかったなと。会社が大きくならなかったら10%くらいで収まって、大きくなったら20%まで使えるような設計の方が、いろんな意味でフェアなんじゃないかと思うんです。

福島:それは良いですね。想定時価総額でバーをおいて、クリアしたらこれくらいSO枠が増えるよと最初に交渉しておくのは、確かにめちゃくちゃフェアですよね。

だって事業計画って変わるじゃないですか。もともと社員300人くらいで上場だと思っていたのが1000人になることって、本当に起こり得るので。

宮田:うちの会社がまさにそうなんです。「社員50人、バリュエーション100億円で上場することを目指すぞ!」と言っていたのに、今すでに社員500人を超えてるので……。

例え話ですけど、今のタイミングで僕が福島さんを引き抜こうとしたら(笑)、普通の給与だったら無理じゃないですか。ここでガツンとSOを何%か渡せたら良いなと思うんですけど、やっぱり後になればなるほど、株主と交渉することが難しくなります。でも、さっき話したような設計だと、後半で「事業をさらに大きくするためにこの人は絶対にとりたいからSOを追加してでもボーナス的に払うべきだ」という時にも使えるので。

投資家との交渉には課題も

福島良典(LayerX)

宮田:(そういう段階的な設計は)信託SOでももしかしたら実現可能かもしれないと、うちのCFOの玉木さんが言ってました。たとえば信託SOとして20%発行しておいて、10%はいつでも使えるけど、この5%とこの5%は一定の成長を達成しないと使えないという失効条件をつける設計なら、VCの人も損しないでしょ、と。

—— 初期の頃にそういう契約を結べるといいんでしょうか。

宮田:それは難しいかもですね。リテラシーの問題だったり、そこに時間を使うくらいだったら事業を頑張れよって気持ちもあるので。

福島:僕はグノシーの時は学生起業だったんですけど、学生の状態でVCにその交渉ができるかというと流石に自信はないですね。それが社会のスタンダードになっていたら言えるんですけど……。

門奈:この記事を投資家の人に「ほら」って見せたらイケるかもしれません(笑)。

日本の金融教育の課題、「SOは怖い」で内定辞退も……

宮田昇始(SmartHR)、門奈剣平(カウシェ)、福島良典(LayerX)

—— SOは従業員のモチベーション向上に貢献する一方で、制度は複雑です。従業員の皆さんに制度設計を説明する上で心がけている(いた)ことはありますか。

門奈:まず全力で説明しようと思ってます。SOってなんとなく怖いし聞きにくい、同僚とも喋っていいのかな?という空気があると感じていて、それをガラッと変えにいきたいんです。

新しいSO制度についてリリースを出したのもそうですし、社員にも、「SOはみなさんが今後スタートアップで活躍していく上でめちゃくちゃ重要なリテラシーです。SOを持っている=一株主ということでもあるので、なんでも聞いて欲しい、むしろぜひ話させて欲しい」と言ってます。

SOが紙クズかもしれないという概念も変えていきたいですね。

福島:それはそうですね。(経営者としては)結構な思いを持って発行してるのに……。

宮田:ある上場企業の経営者の方から聞いたんですけど、すごい金額のSOを持ってらっしゃった社員の方から転職を申し出られたそうで、驚いて「いやいや何で?」と聞くと、「(問題は)給与です」と。「嘘でしょ?」となって、あなたのSOはこんなに価値があるものなんですよ、と説明したら転職止めますとなったそうで。

(別のケースでは)これは又聞きなんですけど、新卒の方などにSOを付与しようとすると、「株は怖いものだと幼い頃からずっと教わってきたらしく、騙されているかもしれないということで退職したり、内定を辞退した」という嘘みたいな話を、本当によく聞くんですよね。

門奈:「親から断れと言われました」という方もいらっしゃいますよね。

宮田:なので、いろんな方法で説明する努力をしていく必要があると思ってます。

シミュレーションで具体的かつフェアな説明を

街

宮田:うちの会社でやっていたことの1つが、シミュレーターです。信託SOについては評価制度と連動していたので、当時の人員計画をベースに、このくらいの等級(評価)で、時価総額がこのくらいだと、キャピタルゲインはこのくらいになりそうだというのを計算できるようにしていました。

採用のオファーを出す時によく利用していたんですが、これ刺さってる方にはめちゃくちゃ刺さってて、毎週それを見ながらお酒を飲んでる人もいたくらい(笑)。一方で、「入社後見たことないっすね」みたいな人もいたので、促してその場で見てもらったら「えっ、こんなんなってんの?」と驚かれることもあって。やっぱりもうちょっと使わなきゃいけなかったなと思ってます。

福島:イメージわかないですもんね。「何株です」と言われても、「それってつまりどういう意味ですか」?みたいな。そこを理解する手助けをしてくれるようなシートは、実はLayerXでも作ってます。

ただこれも「入社してくれたら何億になりますよ」とか、こっちが言いすぎるのはNGだと思うんです。そうじゃなくて、こういう時価総額にしていきたいけど、その場合はこれくらいのキャピタルゲインのイメージになりますよとフェアに伝えることがすごく大事

門奈:僕は先輩方のシミュレーションシートをただひたすら参考にさせていただいてます(笑)。

現金 vs. ストックオプション、あなたならどうする?

宮田昇始(SmartHR)、門奈剣平(カウシェ)、福島良典(LayerX)

門奈:あとは従業員のリテラシーを上げてもらうために、オファーを出す時に2案作るようにしています。SOが多くて給与がリスクを取っているものと、給与はリスクを取らない代わりにSOは軽くなるものを提示して天秤にかけてもらってるんです。もちろん提示する際にこちらからSOの説明はさせていただきますが、同時に選ぶ過程で本人にも勉強して欲しいなと思っていて。

福島:それはすごくいいやり方だと思います。自分の報酬を給与じゃなく株式でもらった方がいいんじゃない?という啓蒙ですよね。アメリカはそもそも給与を現金で全額もらうという考えの方が珍しくて、むしろ株式報酬の割合が高い。SOも含めて給与なんですよ。でも日本は投資の経験が少ない人が多いので、そうした意識があまりないんですよね。

宮田:実はうちの会社も1度カウシェさんと同じことを考えたんですけど、(SmartHRの場合は)やりませんでした。理由は「SOが強すぎるから」。やっぱり現金化された時のインパクトが全然違うので。

—— SmartHRは2020年9月入社以降の従業員に対して、SOを付与するのではなく、半年に1度の成果給を支給する方式に変更されていますね。

宮田:はい、今はSOから現金に変わったという感じです。以前は「給与一律、月35万円」みたいな時代もありました。そうすると皆さん、だいたい前の会社より給与を下げて入社して下さってたんですね。今もそういう方もいらっしゃるにはいらっしゃるんですが、そういうことが以前より起こりづらくなってきています。それにリスクとリターンはセットだと思っているんですが、リスクを取っていただかなくとも報酬を支払える規模になってきたことが背景の1つです。

福島:さっきも話しましたが、SOも「sameリスクsameリターン」。フェーズによって配り方にも当然メリハリがつきますし、より少ないリスクでより多くのリターンを、というのは僕はフェアじゃないと思います。

門奈:それは本当にそうですね。SOは三者三様。皆さんが選べる状態になるよう、こうして情報を発信していくことに価値があると信じています。

ストックオプションとは?制度の歴史背景からメリット・デメリットなど詳しく解説

ストックオプションとは?制度の歴史背景からメリット・デメリットなど詳しく解説

一つ目は、オプション数、権利行使価格といった権利内容が権利付与日において確定しているストックオプションです。このストックオプションは、 固定型ストックオプション (fixed stock option)と呼ばれます。一方、業績水準の達成等によって、権利内容が将来期日に確定するストックオプションは 業績ベース型ストックオプション (performance-based stock option)と呼ばれます。

ストックオプションのメリット

ストックオプションを付与された取締役や従業員は、将来的に自社の株主となり、株主価値の上昇が自己の報酬に影響するようになります。したがって、 自ずと株主に損失を与えるような行動は避け、株主価値・企業価値の向上を目指して行動をするようになることが期待されます 。これがストックオプションが企業に導入される最大のメリットです。

現時点では、役員や従業員へ現金を支払う必要がありません。このため、 会社としては財務に余裕がなくても、将来的なインセンティブを約束する形で優秀な人材を確保しやすくなります。
経営者、マネジャー、従業員は、ストックオプションの権利を行使しないことも選べるので、購入前なら株価が下がっても損失を被る心配がありません。つまり、ストックオプションの権利を受け取る側からすると、ストックオプションはダウンサイドリスクがないということになります。

ストックオプションのデメリット

したがって、 付与のルールや制度設計については、このようなリスクを回避できるよう十分検討しなければなりません 。たとえば、株式公開準備中に入社した役員が、株式上場と同時にストックオプションの行使を行い、多額の報酬を手にして退職してしまうというケースも少なくありません。ストックオプション制度を会社に導入する際には、きちんとこれらのデメリットについて認識しておく必要があります。

ストックオプションの税制

税制適格の場合

税制非適格の場合

税制適格の要件
税制適格となる場合には、次の要件を充たす必要があります。 ストックオプション
1.付与対象者
次のいずれかに該当する者で大口株主や利害関係者ではないこと
①自社の取締役、執行役又は使用人
②発行済株式総数の50%超を直接または間接に保有する法人の取締役、執行役又は使用人

M&Aの際にストックオプションはどうなる?種類や取得方法についても解説!

公認会計士 牧田彰俊

有限責任監査法人トーマツ入所、各種業務の法定監査、IPO支援に携わる。 その後、ファイナンシャルアドバイザリーサービス部門にてM&A アドバイザリー業務・財務デューディリジェンス業務・企業価値評価業務等に従事。 組織再編によりデロイトトーマツファイナンシャルアドバイザリー合同会社に異動し、主に国内ミドルキャップ案件のM&Aアドバイザリーとして、豊富な成約実績を収める。 2018年、これまで以上に柔軟に迅速に各種ニーズに応えるべく牧田公認会計士事務所を設立し、現在に至る。本記事の監修を務める。メンバーの紹介はこちら。

ストックオプションは、譲渡側(売手側)企業が完全子会社か消滅会社になる場合注意を要します。この記事では、譲渡側(売手側)・譲受側(買手側)双方から見たストックオプションの扱い方や、種類・発行方法・注意点をご紹介します。

目次 【閉じる】

  1. M&Aにおけるストックオプションの取り扱い
  2. 売手側企業のストックオプションの扱い方
  3. 買手側企業のストックオプションの扱い方
  4. ストックオプションの種類
  5. ストックオプションを通じたインセンティブの取得方法
  6. M&Aでストックオプションを実行する際の注意点
  7. まとめ

M&Aにおけるストックオプションの取り扱い

M&Aにおけるストックオプションの取り扱い

ストックオプションとは

「ストックオプション(SO)」とは、企業が役員や従業員に対して発行する「新株予約権」のことを指します。権利行使期間にストックオプションの権利を行使すると、あらかじめ決められた価格で、企業から一定数の自社株を購入できます。

また、企業価値の向上とストックオプションにより享受する利益は連動すします。役員・従業員の企業価値に対する意識が高まり、より大きな報酬を求め企業価値向上に努めます。ステークホルダーにとっても有益な仕組みと考えることができます。

M&Aを実施した際のストックオプションの取り扱い

ストックオプション
ストックオプション

ストックオプション活用例

2020年に楽天が発行したストックオプションの段階行使条件

売手側企業のストックオプションの扱い方

売手側企業のストックオプションの扱い方

完全子会社する場合

株式譲渡・株式移転・株式交換によって譲渡側(売手側)企業が譲受側(買手側)企業の完全子会社になる場合、譲渡側(売手側)企業が発行したストックオプションを完全子会社の債務として残存させてしまうと、ストックオプションの行使により完全親子会社関係が崩れるなど、買手が想定していない状況になる可能性があります。そこで、M&Aのような組織再編時は売手と買手との話し合いの中で然るべき価格でストックオプションを買い取ること一般的です。

新株予約権買取請求の例

合併が行われる場合

買手側企業のストックオプションの扱い方

買手側企業のストックオプションの扱い方

完全子会社化する場合

譲受側(買手側)企業が譲渡側(売手側)企業を完全子会社化する場合、譲受側(買手側)企業は譲渡側(売手側)企業が発行したストックオプションに対し、選択肢は2種類です。

・売手企業のストックオプションを買い取る
・売手企業のストックオプションを消滅させ、別のインセンティブを付与する

譲渡後に譲渡側(売手側)企業のストックオプションの権利保有者がストックオプションを行使した場合、完全子会社関係が崩れてしまい、組織再編をした意義を失くしてしまう可能性があります。完全子会社のためには、譲受側(買手側)は譲渡側(売手側)企業が発行する全株式の取得を要するからです。このリスクを避けるために、譲受側(買手側)企業は、ストックオプションを含む「潜在株式」を処理します。

合併が行われる場合

合併によって譲渡側(売手側)企業が消滅する場合、譲渡側(売手側)企業が発行したストックオプションは消滅します。譲受側(買手側)企業の選択肢は2種類です。

・ストックオプション権利保有者に対して金銭的な補償を行う
・譲受側(買い手側)企業のストックオプションを付与する

譲渡側(売り手側)が発行したストックオプションに、存続会社からの金銭的補償やストックオプションの付与が規定されていた場合、譲受側(買手側)企業はこれに従います。基本的な考え方は完全子会社化の場合と同様です。

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